EXHIBITION

企画展示

【終了】フクロウが運んできたもの

2017年7月4日(火)~10月28日(土) ※ 期間を延長しました。

 麻布大学いのちの博物館の企画展示では、大学でおこなっている研究の紹介をしています。今回は本学の野生動物学研究室が八ヶ岳自然クラブの協力を得て研究してきたフクロウの食べ物を紹介します。

 日本のフクロウはユーラシアにもいる「ウラルフクロウ」で、森林にすむネズミを食べることに特徴があります。ところが八ヶ岳では、そういう場合もありますが、牧場の近くの巣ではハタネズミという草原にすむネズミがよく食べられていることがわかりました。

 この企画展示は大学と地域のグループとが進める協働の好例だと思われます。夏休み期間でもあるので、多くの方々の来館を期待しています。

展示概要

ケース1
 ケース1にはフクロウの剥製やバードカービングの模型などを配置し、背後にフクロウの概論などの解説パネルを置きました。
 「フクロウ」は「フクロウ類」というグループをさす場合と学名で「ウラルのフクロウ」という種をさす場合があり、この展示では後者をさします。同じ種はユーラシア大陸北部をヨーロッパまで分布しています。
 ネズミをつかまえて食べることに特化しており、そのために耳がきわめてよく、左右の耳に聞こえるずれから正確な位置を知ることができ、また翼の先端の羽にセレーションと呼ばれる特殊な構造をもつことで、音もなく飛ぶことができます。
 またフクロウが食物連鎖の最上位に位置することも説明しました。

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  ケース1 フクロウの特徴などを紹介

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  フクロウの剥製(相模原市立博物館蔵)

 骨格標本は高槻が2015年頃に宮城県金華山で発見した死体で、まったく無傷でした。これを中坪啓人氏が骨格標本にしましたが、よい標本だったので翼の羽はつけてくれました。これは非常に高度な技術です。

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  フクロウの骨格標本(本館蔵)

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  <写真左> フクロウのバードカービング(竜川禎氏作)
  <写真右> 紙粘土のフクロウ(高槻成紀作)


■ケース2
 ケース2は八ヶ岳でのフクロウの食性分析の内容を紹介しました。フクロウの巣箱に残されたネズミの骨を取り出す調査なので、ネズミの骨の説明をしました。

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  ケース2 八ヶ岳のフクロウの食性分析とネズミの骨などを展示

 このコーナーがハイライトのひとつで、ネズミの骨は小さく、展示しにくいので、工夫をしました。「本物を展示する」という本館の姿勢は維持し、小さい骨をアクリルの円柱を作ってその上に載せました。ただそれでは小さくてわかりにくいので、骨の拡大模型を作ってそれを背後に置きました。

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  ネズミの骨についての展示

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  アクリル円柱に載せたネズミの骨

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  紙粘土で作ったネズミの骨の模型:上の左から肩甲骨、寛骨、下左から大腿骨、脛腓骨、上腕骨、尺骨

 それから手前にはハタネズミとアカネズミの模型を置きました。

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  ネズミの骨の展示(正面から)
 
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  <写真左> ハタネズミの模型
  <写真右> アカネズミの模型

 そして取り出したネズミの骨を昆虫標本箱に並べて展示しました。

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  ネズミの骨を並べた標本箱

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  <写真左・右> 標本箱に並べられたネズミの骨


■フクロウギャラリー
 写真の展示コーナーは「フクロウギャラリー」と名付けました。
 これは12角形で、1面が出入り口になっています。八ヶ岳自然クラブの方が撮影されたすばらしい写真を大きく引き伸ばし、11枚を厳選して、おおむね季節を追って配置しました。狭い部屋のもつ独特の雰囲気があり、なかなかよい空間になりました。

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  フクロウギャラリーの外観

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  フクロウの写真

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  「ギャラリー」を上からみたところ

 外壁には実際に使われたフクロウの人工巣箱を紹介しました。その出入り口にフクロウのヒナの模型を置きました。

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  <写真左> 実際に使われた人工巣箱(実は巣箱に中にも「隠し味」が・・・!? ぜひ覗いてみてください!)
  <写真右> フクロウのヒナの模型

 また、ギャラリーの入り口近くにはフクロウの実習をした高校生の感想文を紹介しました。以前、麻布大学でおこなった「高大連携事業」としての高校生を対象とした実習をしました。ネズミの骨を取り出し、フクロウの食性を森林伐採と関連させて考えてもらいました。その後、感想文を書いてもらいましたが、たいへんすばらしく、十代のみずみずしい感性があふれるものでした。

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 このときの実習のようすは「麻布大学雑誌」に記録を書いておいたので、展示場にそのコピーを配布資料として提供しました。
 なお、八ヶ岳のフクロウの食性についてはJournal of Raptor Research(猛禽類学研究雑誌)に論文として公表したので、そのコピーも提供しています。この論文の中のグラフはパネル展示にも使っています。
 これらの論文コピーと、八ヶ岳のフクロウの調査のことを紹介した「動物を守りたい君へ」(岩波ジュニア新書)を木机の上に置きました。この机は学園創立125執念記念事業の寄付金によるもので、東南アジアの植民地時代に作られたものだそうです。

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  アンティークの机においた「動物を守りたい君へ」と論文の別刷り


■配付パンフレット  
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