2019年1月8日-2019年4月27日
私たちは日々、スーパーで食材を買い、調理して食事をしますが、その食材の由来について考えることはあまりありません。日本人は寿司が好きですが、寿司は基本的にご飯の上に生の魚が載せてあります。その魚は海に生きる野生の魚です。
しかし、牛肉や卵となると、野生動物ではなく、家畜です。家畜は現代の大量消費に対応するために、多数が効率的に飼育されています。生産者は収益をあげるために、できるだけ多数の家畜を、できるだけ安く育てようとするため、家畜の飼育環境が劣悪になることがあります。
その行き過ぎの実態を明らかにしたのが1964年にイギリスで出版された「アニマル・マシーン」で、飼育家畜の飼育環境の劣悪さを告発しました。こうした流れは家畜の飼育のあり方に見直しを迫り、それは「アニマルウェルフェア」と呼ばれるようになりました。
本学の動物行動管理学研究室の田中智夫教授は、我が国でいち早くこの問題を取り上げ、先駆的な研究を進めて来られました。今回は田中先生にご指導いただき、アニマルウェルフェアの現状や将来について紹介する企画展示となりました。
■ 展示のようす
展示ではアニマルウェルフェアについて、1)その背景、2)田中先生の研究などの紹介、3)アニマルウェルフェア の今後について解説パネルを展示しました。
そしてアニマルウェルフェアに関係する3つの動物模型を展示しました。一つはブルドッグで、まだアニマルウェルフェアという考えがなかった時代に、「牛攻め」というウシを攻撃させるのをみるために品種改良されたというブルドッグの模型です。もう一つは麻布大学で飼育されているヒツジの模型、そして田中先生の主要な研究対象であるニワトリの模型です。また解剖学第一研究室所蔵のニワトリの古い剥製標本を展示しました。
このほか、ケースの外にアニマルウェルフェアに関する書籍を紹介するとともに、田中先生のニワトリの人形のコレクションを展示しました。
「動物研究」というと普通の人の生活と関係がないようですが、アニマルウェルフェアは日常生活とも関係するテーマなので「いのちの博物館」にふさわしい展示になったと思います。
麻布大学いのちの博物館 公式twitter