【目次】
1. 博物館について
2. 標本一般について
3. 標本作成について
4. 個別の動物について
5. 歴史について
6. その他
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■ 1. 博物館について
Q.大学の授業で実際この博物館は利用するのですか?
A.使います。学生が学生に対して、展示物を勉強したあと解説し、さまざまな質問を受けたりする演習をしています。
■ 2. 標本一般について
Q.イルカが特にそうだったのですが、全体的に骨格標本歯が他の骨よりもつるぴかで他の部位の骨とくらべるときれいに見えたのはなぜでしょうか?
A.そのように見えたのではなく、実際に歯はほかの骨よりも緻密で表面がなめらかです。それは硬い食べ物を噛み切ったり、すりつぶしたりする必要があるからです。ちょうど建物の骨組みを作る鉄筋と、ナイフでは金属の硬さや緻密さが違うのと同じです。
Q.展示標本は本物なのでしょうか
A.すべて本物です。あまりにきれいに仕上がった骨格標本を見ると、まるでプラスチックで作ったものではないかと思うほどですが、本館に展示した標本はすべて本物です。ただし、教材模型は別です。とはいえ、「本物の教材」であり、教材のコピーではありません。唯一例外といえるのは、ハンズオンにあるウマなどの骨で、これは解剖学の教材に使ったものです。
関連しますが、アンケートに「リアルだった」という感想が複数あります。本物なのだからもちろん「リアル」です。ただ、前後の関係から想像するに、「リアル」ということばが本物という意味ではなく、「すごい迫力がある」という意味で使われているのかもしれません。
Q.博物館にはたくさんの貴重な資料がありましたが、他にもあるのですか?
A.展示したものの10倍以上の標本があります。
■ 3. 標本作成について
Q.模型を組み立てたのは先生方ですか。生徒さん方ですか?それともまったく別の方々ですか?
A.プロの骨格制作専門家です。
Q.骨標本はどうやって作るんですか?
A.死体の皮をはぎ、内臓や筋肉をはずしたあと、大きな鍋で煮ます。ネズミなど小さなものは入れ歯洗剤(ポリデントなど)につけます。水換えをくりかえし、そのつど、丁寧に筋肉などを除いていきます。骨は細かい針金を使って組み立てます。小さい動物はバラけないまま形を整えて乾燥させます。鍋に入らない大きな動物は大きなタンクにつけて、時間をかけて腐らせます。それより大きいものは土に埋めますが、本学ではそれはしていません。
Q.標本の作成法を知りたい。
A.死体の皮をはぎ、筋肉を粗く除いたあと、基本的には料理と同じように煮て肉をはずします。あまり熱いと骨が変形します。小型の場合はある程度でとめ、丁寧に除肉します。中大型の場合は、骨の位置関係がわかるようにしてから、はずし、後で組み立てます。標本作成法はいくつか本が出ています。
Q.プラスチネーションはどうして作るのか
A.死体の血管に生理的食塩水を入れ、そのあとにプラスチックを注入して固めます。その後、血管などの軟組織を薬品で溶かして除去します。
Q.骨を専門に研究している研究室があるのでしょうか。
A.骨だけを研究しているということではありませんが、獣医学科に解剖学研究室があります。
■ 4. 個別の動物について
Q.肉食動物よりも草食動物の方が絶滅しないのはなぜでしょうか?
A.これは解説に書いてありますから、再訪してじっくり勉強してください。
Q.ガリレオが見つけた骨格の違いについては?
A.これは解説に書いてありますから、再訪してじっくり勉強してください。
Q.アナコンダ骨格はレプリカではないですか?
A.アナコンダに限らず展示している骨はすべてホンモノです。
Q.バンドウイルカのヒレにある、小さくて孤立した骨は何ですか?
A.「ヒレ」は前肢です。付け根のほうには上腕骨と尺骨など、人でいえば腕の部分が短くなってついています。「孤立した骨」は手骨と指骨、つまり手のひらと指の骨です。ふつうの動物では密着して関節でつながっていますが、イルカでは丈夫な軟組織の中に浮かんだ状態で離れ離れになっています。
Q.イルカのヒレの指骨の間には間隔が空いているが、どのような組織になっているのか
A.標本を見ると指骨と指骨のあいだが開いているので、見やすくするために開けているのではないかと考える人もいますが、実際離れてついています。「ヒレ」とは前肢ですが、前肢全体が一枚のヒレのようになっており、非常に丈夫なものです。我々の指のように曲がっては強い水圧を生み出して推進力にすることはできませんから、「一枚板」である必要があるわけです。まるで硬いゴムのようですが、プラスチックのようではなく、強い力をかければ曲がる程度の硬さです。まさにダイバーが使うフィン(ひれ)のような質感です。したがって指骨はその硬いヒレ組織の中に埋没したような形で離れて配置しています。このため、骨標本を作るときはある段階で印をつけておかないとわからなくなります。
Q.アナコンダの標本はアマゾン展と同じ個体でしょうか?
A.はい、上野の科学博物館でおこなわれたアマゾン展に展示されたのと同じアナコンダです。あの展示が終わったあと、板と骨をこの展示場に持参してもらい、「うねり」の具合を指示して固定してもらいました。アマゾン展ではただまっすぐに伸ばしていましたから、印象はまったく違うものになりました。
Q.オオカミの骨格は何オオカミですか?ニホンオオカミではないと思いますが。
A.ハイイロオオカミです。最近のDNA研究により、ニホンオオカミは独立した種ではなく、ハイイロオオカミの亜種であることが明らかになりました。
Q.草食・・・どうしてタンパク質になるの・・・体のどこで?
A.植物の葉の原形質にはある程度のタンパク率は含まれていますが、丈夫な細胞壁で守られているので、ほ乳類は利用できません。草食獣は丈夫な歯ですりつぶして原形質を利用しますが、それよりも大きな胃に微生物がいて、発酵することで植物を分解します。微生物は寿命が短く、膨大な死体が出ますから、これもタンパク質となって利用されます。
Q.バビルサって何?
A.イノシシの仲間で、インドネシアの森林に生息します。牙が2対あり、大きく曲がっています。オスの上顎の犬歯は皮膚を突き抜け、異様な感じです。
■ 5. 歴史について
Q.「温故知新」の大学の歴史(年代とともに)の中に、麻布獣医科大学の表記がないのはナゼ?
A.この歴史パネルは大学の沿革ではなく、在学生や先生方の生の声を伝えようとしたものなので、大学の名前などは書いていません。大学の記念誌などをご覧ください。
■ 6. その他
Q.模型や標本、プラスチネーションはどの分野に進むと自分で作成できるんですか?
A.骨は獣医学部で勉強します。骨の標本は基本的に煮ればできるので、誰でも可能です。しかし組み立ては参考書があるので、丁寧に作ればある程度のものはできますが、本格的なものはむずかしいです。専門家がノウハウを知っています。標本作成そのものは大学では教えていません。プラスティネーションは獣医学部の先生が循環器の研究のために開発されましたが、退職されたので、現在はおこなわれていません。
麻布大学いのちの博物館 公式twitter