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いのちの博物館だより

2020.01.28

さくらサイエンス研修生の来館の報告(上席学芸員:高槻成紀)

2020年1月22日にさくらサイエンスで研修中のアジアの研修生が来館されました。最初に挨拶をして、まずオオカミとイヌのコーナーで説明しました。皆さん獣医を志す人ですから、興味津々のようで、質問もありました。
次に今おこなっている「動物の食べ物」のコーナーでは草食獣のニホンジカ、果実食のニホンザル、果実依存的ながら肉食もするタヌキの説明をしました。ソウル大学の木村順平先生から寄贈された韓半島のタヌキの頭骨があったので、韓国からの研修生には喜んでもらえました。ヤギの胃を展示していたので、「これがわかる人はいますか?」と聞くと、さすがに獣医学を学ぶ人たちですから、何人から「Goat's stomach」と正解がありました。その後、大型標本のコーナーに行きましたが、アナコンダが印象的だったようです。あとで一人の研修生が「アナコンダの肋骨は何本あるんですか?」と聞いてきたので「どうぞ数えてください」と笑いました。ゾウの全身骨格の前にはハムスターがあります。その大きさの違いを強調した後「にもかかわらず、頭、背骨、四肢、尾という基本は共通しています。進化によってこれだけ違いが生じたということは驚くべきことです」と言ったら、皆さん深くうなずいていました。引率いただいた黄先生が追加説明をしてくださいました。

さくらサイエンス①20200122
【解説する黄教授】

同じコーナーにはイルカの骨格標本もあり、その特殊性を説明しました。黄先生が頚骨が7本であることを説明されたので、このイルカではその7本の頚骨がわずか5cmほどの中にぎっしり詰まっていることを説明しました。また哺乳類は歯が多型であることが特徴(「異型歯」という)とされますが、イルカは獲物を捕らえるためにワニのように同じは(同型歯)になっていることを説明しました。
さくらサイエンス②20200122
【イルカの解説をする高槻】

有名なガリレオが、哺乳類の大サイズの比較をする中で、動物の体長が大きくなれば、体重はその3乗で重くなるから、体重を支える四肢は相似形ではなく、大きい動物ほど骨の断面積が大きくなるはずだと予測したことを説明しました。
さくらサイエンス③20200122
【ガリレオの「動物のサイズと四肢の骨の太さの関係」を説明する高槻】

歴史のコーナでは1945年5月の東京大空襲で学舎を全焼したこと、その後中村先生が苦労して復活を果たされ、卒業生が貢献したことなどを話しました。こういう国際的な状況、特にアジアの人にアジア・太平洋戦争の話をすることには、憚られるものもあるのですが、言葉の背後に「そういう悲しい過去があるが、今の平和な日本があってみなさんがともに学べている」ということを感じてもらいたいと思い、あえて説明をしました。
戦後しばらくまでは、獣医系である麻布大学は9割以上が男子学生だったが、その後徐々に女性が入学するようになり、今では過半数が女性になっているという話をしたら、「私の国では9割が女性です」という声もありました。
その後、ハンズオンコーナーで標本に触ってもらいました。特にゾウの顎を持ち上げるのは嬉しそうでした。
さくらサイエンス④20200122
【ゾウの顎骨を持ち上げる研修生】

ゾウの歯は非常に特殊で、歯が下から上ではなく、奥から前に移動することを説明したら、驚いていました。
さくらサイエンス⑤20200122
【ゾウの歯を説明する高槻】

皆さんリラックスして雑談をしていたので、私が「東京の1月の気温は、南の国から来た人には寒いでしょうが、もっと寒い国もありますよね」と言ったらモンゴルからの人は「マイナス20度」と言ったのでスリランカから来た人は目を丸くしていました。確かに皆さんの顔を見ても「アジアの多様性」を感じましたし、その多様な人が体験を共有することは素晴らしいと感じました。そして麻布大学がその機会を提供していることもうれしく思いました。

最後に記念撮影をとり、挨拶をしました。
さくらサイエンス⑥20200122
ゾウの展示の前で記念撮影】

「皆さんの滞在が充実していることを期待しています。どうか滞在を楽しんでください。一生懸命習得して、母国に持ち帰ってください。みなさんがそれぞれの国の獣医のパイオニアになってくださることを期待しています。」と言ったら拍手がわきました。

【参加研修生国名一覧】
バングラデシュ人民共和国、ブータン王国、カンボジア王国、中華人民共和国、カザフスタン共和国、モンゴル国、フィリピン共和国、ラオス人民民主共和国、スリランカ民主社会主義共和国、ウズベキスタン、ベトナム社会主義共和国、インド共和国、パプアニューギニア独立国、ミャンマー連邦共和国、インドネシア共和国、ネパール連邦民主共和国、パキスタン・イスラム共和国、台湾、大韓民国、マレーシア、タイ王国 (順不同)

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団体様(5人以上)で見学される場合は、2週間前までに事前にご予約いただく必要があります。

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