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いのちの博物館だより

2018.02.07

博物館セミナー2「シカの角のふしぎ」

【目次】
 1. セミナーの様子
 2. 参加者の感想(抜粋)

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■ 1. セミナーの様子
 2018年1月27日に企画展示「シカの角のふしぎ」に連動したセミナーを実施しました。定員20名のところ21名から参加申し込みがありました。年齢層は小学生から80歳以上まで幅広く、中にはわざわざ北海道から来た人もおられました。

 初めに村上賢館長から挨拶があり、南正人准教授による講義と高槻成紀上席学芸員による実習がありました。

 講義では宮城県金華山島のニホンジカに名前をつけて長年行動観察をした結果のうち、オスの角に関する話がありました。初めにシカ以外のヒツジなどの角も紹介され、角はオスが同じ種のオスとの戦いに使われること、実際の戦いに使われるだけでなく、見かけの誇示(ディスプレー)に使われることが説明されました。ニホンジカは一夫多妻であり、交尾期には優位で大きな角を持つシカのほうが独占的にメスと交尾の機会を持てることを、「モヤシ」と名付けられたオスを紹介しながら説明されました。

南先生による講義

 
 これに対して活発な質問があり、議論が盛り上がりました。
 ここで記念撮影をし、休憩としました。

記念撮影


 実習では、島(金華山)と本土(岩手県五葉山)の2つの集団の特徴を説明し、それぞれから得た角を計測しました。まず参加者一人が島と本土の角を1本ずつ受け取り、長さ、周囲、重さを測定しました。

シカの角を計測する参加者

シカの角の重さを測定する

 そのあとで、長さ(x軸)と重さ(y軸)の関係をプロットしました。その点を島と本土それぞれで結ぶカーブを描くと、島が下に、本土が上になりました。

 これから「同じ長さなら本土のほうが重い」つまり「同じ重さなら島のほうが長い」ということを読み取りました。島のほうはシカが満員状態で栄養不足です。島のオスにとっては、生きるためには角への投資をあまりしないほうが生存率は高まりますが、しかしそれでは多くのメスを確保できません。そこで限られたカルシウムを角に投資するなら、見た目が立派に見えるように細くて長い角になるようにしているのではないかと考えました。つまり、こういう環境のオスは、生き延びることと、子孫を残すことのギリギリの選択をしているということです。

 データは大きなグラフ用紙に点をプロットしましたが、これについてはもっとスマートな方法のほうがよいという意見と、素朴だがこういう方法がよいという意見がありました。私たちは詳細で正確なデータは専門家がパソコンで解析するほうがよいけれども、それでは一般の参加者が自分がとったデータの実感がもてないと思います。こういう実習では、データの意味を確認しながら手作りのような作業をするほうが理解が進むと考え、こういう方法を選びました。

 感想文を読むと、よい体験と感じた人が多かったようです。

 これで予定していたほぼ2時間が経ちましたので、ひとまずセミナーは終了とし、希望者には展示室のシカの展示を解説することにしました。ほとんどの参加者が同行され、熱心に展示を見て、ここでも活発な質問が出て、充実した時間を過ごしていただけたと思いました。

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■ 2. セミナーの感想(抜粋)

 本日は大変興味深い課題をとりあげた講義を企画していただき感謝いたします。前半の南先生の講義では、ニホンジカについて、あまり知られない生態や角の存在理由などを知ることができました。私は仕事でシカの頭数調整に関わることがあり、シカの生態については日頃から情報収集に努めていますが、今日は新しい知識を得ることができ、それだけでも価値がありました。高槻先生の講義につきましては、実習からシカの角の地域的差異をとらえることができ、実習の手法自体が、環境教育を行う側としての目線でみて参考になり、後学のためになったと感じました。

 角の役割や、シカの角のはえ変わりなど、おもしろいことがたくさん聞けてよかったです。とくに、角や体の育ちがよいことで、モヤシくんのように、有利になることは知っていたけど、あれだけのメスを独占できるのはすごいと思いました。また、実習では、本土と島で、大きさや、生活に違いがあることがわかり、とても勉強になりました。

 角の役割について、生殖の行動にからめて興味深い話が聞けたのが良かった。また角をじっくりとさわってみたことがなかったので、その重量も含めて、いい体験になった。角のカーブも今まで意識したことがなかったので、興味深かった。

 シカの行動や生態だけでなく、野生のシカの調査方法を知ることができ興味深かったです(名前をつけて追跡するのは大変そう)。講義だけではなく実習もあったので、より楽しさを味わうことができました。シカの角にさわれてワクワクしました。展示の前に解説を聞けたのも良かったです。シカの角って本当にふしぎだな・・・と思います。シカが好きで参加しましたが、さらにシカが好きになりました。展示のシカの紙粘土の模型がとても可愛かったです。

・なわばりオスとか、スニーキングとか、素人が観察してもわかりますか?
・なわばりがもてなかったら、体重軽く速く走る戦略にかわるということでしょうか?
・目安程度だとは知っていたのですが、年齢と尖数が関係ないとは驚きました。
・質問のレベルがとても高くて、それに対する先生の話もとても高度で、ものすごく興味深く聞きました。おもしろい!!
・角から、環境や生息状況がわかるとは!言われてみればあたりまえのことかもしれないが、データできちっと出て感動しました。「自然の声を聞く」ですね♡
「雪は天からの手紙」、「角はシカからの手紙」です♡

 ニホンジカの長年の研究で苦労も多かったと思います。ご苦労様です。次回は是非エゾシカについての研究を聞きたいです。角の形状は芸術的です。芸術性を解明するような方向性があればと期待します。
 角の計測は参加者にさせると不確実性が高まります。時間もかかります。もっとスマートなやり方を。

 全く知らなかったシカのツノについて多くの知識を得る事ができました。小さなお子さん、学生さんがとても熱心な事にびっくりしました。DNAを残したいという生命の本能?につき、新たに感じることがありました。

 二群のサンプルを計測させて、重さ、長さを二次元マップ上でプロットをさせるアナログ的手法は、子どもや一般の大人にとってもよい問題だと思いました。
 数値をパソコンに打ち込んでやってもらう方法もあるかも知れませんが、次回もこれと同じような方法でいいのではないでしょうか。科学的アプローチの教育法としていいと思いました。

 私はNHKテレビの「ダーウィンが来た」やNHKBSプレミアムの「ワイルドライフ」のファンで、殆ど毎回観ています。今までは漫然と観ておりましたが、今日先生方のお話を聞かせて頂きましたので、これからはいく分でも理論的観察ができるようになったと思います。本当に良い企画をしてくださったこと感謝致します。ありがとうございました。

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