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いのちの博物館だより

2020.03.30

「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」の結果報告 2020/3/30(月)

「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」の結果報告 麻布大学いのちの博物館 上席学芸員 高槻成紀

2019年12月14日に「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」というワークショップを行いました(こちら)。その時は八ヶ岳の麓にかけた7つの巣箱から確保したフクロウの食べ物の残骸のうち、2つ分を分析しました。その後、高槻が3つ分を分析しました。残りの2つは今後分析する予定ですが、ここでは5つ分の結果を報告しておきます。

2019年に回収された巣のうちこれまでに分析が終了したのはK3, N1、O2、O7、O13の5カ所である。巣箱に運ばれたネズミのうち、草原にすむハタネズミ系と森林にすむアカネズミ系が検出された【表1】。
【表1】.jpg
【表1】2011年以降のアカネズミ系 (アカ)とハタネズミ系(ハタ)の回収数。ハタネズミ%は2019年のハタネズミの百分率。「これまでの通算」は2011年からの合計値による。

これによると2019年のハタネズミ率は40%前後で、O2だけが80%と非常に高かった。これを通算値と比較するとすべての場所でハタネズミ率が大幅に高くなっていることがわかる(O13だけはデータが2019年しかない)。

次にこれらを含めてこれまでの他の場所を含めたデータをまとめたハタネズミ率を【図1】に示した。
【図1】.jpg
【図1】これまでのすべての人工巣のハタネズミ率の推移

これを見ても2016年以降、ハタネズミ率が増加している。
この理由はわかっていない。ハタネズミは草原生のネズミであり、アカネズミ系は森林生のネズミなので、森林が伐採されるなどすればフクロウの食物にハタネズミが増える可能性はある。しかしこの数年で特に伐採が進んだということはない。これまでの結果を個別にみると、ハタネズミが増えた巣箱もあるが、ハタネズミはさほど変わらないがアカネズミ系が減ったという巣箱はかなりあった。したがってこれらが複合的に起きた結果が【図1】に反映されている可能性がある。今後はこうしたネズミの生息環境に着目する必要がある。

『謝辞』
ご協力いただいている八ヶ岳自然クラブ、ことに田中盛氏に厚く御礼申し上げます。
また、ワークショップに参加し、分析に協力いただいた皆様にもお礼申し上げます。

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